2015年11月30日

『浅草ブラン・ノワール』表紙に隠された、ふたつの嘘

現在連載中の『東京フラッパーガール lite 浅草ブラン・ノワール』の表紙といえば、これ。
宗像久嗣氏渾身の作です。
sample01.jpg
モンスタークライアント(=私)の理不尽な差し戻しにもかかわらず、素晴らしいイラストを描いてくれました。
詳細はこちらで↓
うちの妻がモンスタークライアントだった(追記あり) - 宗像久嗣の研鑚



そんなこんなで完成したこの表紙ですが、実は「史実的に明らかに間違っている」部分が二カ所あります(細かいところは他にもありますが、目立たないのでノーカン)。
どこかお分かりでしょうか?

答えは、
・環の服装
・葛葉の眼鏡
です。



環の服装ですが、この表紙に描かれているのは作中の舞台である1930年代のファッションではなく、実は1960年代のものなのです。
なんで当時のものを使わないのかといいますと……実際のファッションを見ていただくと早いと思われます。
「1930s fashion」Google画像検索結果一覧
より分かりやすいように欧米版ですが、日本でもまあ似たような感じです。もうちょっと垢抜けませんが(笑)。
いかがですか? スカート丈が膝下と長く、ウエストを絞ってはいますが全体的に縦長のシルエット。
かなりエレガントで女性的な印象ですよね。
個人的にはこのスタイルも大好きなのですが、環に着せるとなると……うーん。おしとやかになりすぎるような気がします。

では今度は、1960年代のファッション。
「1960s fashion」Google画像検索結果一覧
ストンとしたシルエットは同じですが、スカート丈は膝丈〜膝上と、一気に快活なスタイルになりました。
色つきということもあり、カラフルで元気いっぱいなイメージ。
環の性格的にもこちらのほうが合うのでは……と思い、時代がずれているのを承知で絵師さんにオーダーしました。
結果的に、暴れん坊おてんばっぽく、イメージ通りに仕上がったと思います。
ちなみに、靴だけは1930年代を参考にしています。Tストラップって可愛いですよね。


で、今度は葛葉の眼鏡。
戦前の眼鏡といえばロイド眼鏡に代表される丸レンズが思い浮かびますが、実は当時の眼鏡は規格が決まっていて、ほぼ100%丸型でした。
レトロさでいえばこの丸型でもいいんですが、ただでさえ葛葉は服装がアナクロということもあり、小説の表紙にするには地味すぎる……。
また「超がつくほど真面目」というキャラ設定も、丸型ではイマイチ活かされないような気がする……。
というわけで、史実には反しますがキャライメージを重視し、あえて当時は存在しないスクエア型の眼鏡にしました。



基本的に私は「時代考証はガッツリ」が信条で、史実に反する事柄は極力取り入れないようにするタイプなのですが、ことこの二点に関しては主義を曲げてビジュアルイメージを優先しました。
「事実を知らないまま(もしくは嘘と気付かないまま)書いてしまう」のと「事実を知っているがあえて嘘をつく」のは、天と地ほどの違いがあると思っていますが、どうでしょう。
すべてを完璧に把握するのは難しいですが、できる限り自分が納得いくように書きたいものです。

posted by 杉浦絵里衣 at 22:27| 雑記